「背信者―聖なる連帯に与りし者」山根道公氏

FEBC特別番組 遠藤周作『沈黙』の真実・前編「背信者―聖なる連帯に与りし者」山根道公氏、お相手・長倉崇宣

前編「背信者―聖なる連帯に与りし者」より
FEBC特別番組 遠藤周作『沈黙』の真実
山根道公氏
(ノートルダム清心女子大学教授)お相手・長倉崇宣


去る1月に封切りされた映画『沈黙―サイレンス』の原作は、作家・遠藤周作の代表作。キリシタン弾圧の激しい江戸初期の日本に命がけで宣教に来た司祭が、踏み絵を踏んで棄教するという衝撃的な内容に込められた真実とは―。生前の遠藤氏と親交が深く、また遠藤作品研究の第一人者でもいらっしゃる山根道公先生にお話を伺います。


なぜこんなしみが―病床での体験

この作品は、苦しい場面ばかりが起きますよね、理不尽な。その時、「なぜ」といくら問うても神は答えてくれない。
これには遠藤さん自身の病床体験が込められていて、結核で2度手術をしたけれども再発、当時結核は死に至る病だったので、3度目は手術死の可能性があったわけです。そして同時に、入院している周りの人が苦しんで死んでいく姿を見て、「なぜこんな苦しみを与えられるのか、どうして神は何もしてくれないのか」という問いがずっとあった。だけど、ある時に「やっとわかった」と。それは、試練を与えるためでも信仰を強めるためでも罪の意識を自覚させるためでもない。神は自分のこの苦しみ、人間の苦しみに本当に寄り添って、この苦しみを共にしてくれている。誰にもこの苦しみを言うことは出来ないけれどもイエスがそばにいて「その苦しみは誰よりも私が一番わかっている」と一緒に苦しんでいてくれる。そのイエスの眼差しに出会う体験をするんですね、病床で。その時に本当に溢れるような涙が出てきたと。