「信仰を生き抜いた女性・森 寛子」加藤常昭氏(3/3)

「信仰を生き抜いた女性・森 寛子」

関屋綾子著『一本の樫の木』(日本基督教団出版局)という本を紹介いたします。一本の樫の木が見える家の思い出を中核にしながら、関屋先生は自分の祖父森 有礼、祖母森 寛子、父森 明、母森 保子、兄森 有正について書いています。その中に祖母森 寛子についての文章があるのです。

腹の底から出て来るような祖母の祈りの声

岩倉具視の娘として育ち、いかにも明治の夫人らしい姿勢の正しい、独りの信仰に生きた女性の姿を見ることが出来ます。病身であったようで、布団の上で過ごすことが多かった晩年のことです。

prayer-white「いろいろ思い出される事柄の中でも真先に目に浮かぶのは、聖書を前にして床の上に端座し、じっと祈っている姿である。祖母の一日の中で特筆すべきことは、朝の約2時間、夕方の約1時間の祈りの時間の事であろう。それは365日変わる事はなかった。」

「父(森 明)が死んだ後、やりどころのない寂しさに神経をしずめる薬などをめずらしく飲んでいた祖母の様子を見て、私は祖母の部屋で相当長い事一緒に寝た。そして真夜中に眠られぬままに50人を越える甥姪の名を一つ一つ呼びながら声を出して神様に話しかけている祖母の姿を、暗(やみ)の中で知ったのであった。
…そこに次々と上げられる何人もの名前と、その一人一人について、事細かに神様に訴え救いを求めている、かつて一度も聞いた事のない祖母の腹の底から出て来るような祈りの声に全身をゆさぶられる思いであった。人はあのように神様に語りかけ願いを持ちかける事が出来るのだという事、そしてそれが自分にも出来るのだという事、つまり代祷(とりなしの祈り)の意味と現実性と、真実性が、理屈ではなく、ことばの説明ではなく、私の心の中に生き生きと注がれた瞬間であったように思う。」

(文責・月刊誌編集部)