「嵐の中へ」村上伸氏 (1/4)

ボンヘッファー、敵前逃亡す・村上伸氏・第3回「嵐の中へ」・D・ボンヘッファーその生涯と信仰(再)

第3回「嵐の中へ」
D・ボンヘッファーその生涯と信仰(再)
村上 伸氏
(日本基督教団隠退牧師)

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神学者からキリスト

ボンヘッファーは一年間のアメリカ滞在を終え、新進の神学教授としてベルリンに帰ってきました。『キリスト論講義』を始めとしてたくさんの業績を残し、まさに前途洋々かのように見えました。しかし、この時すでに嵐が近づいていたのであります。それは、ナチスです。あのヒトラーのナチス党が次第に力を蓄えてきていたのです。
多くのキリスト者はヒトラーの指導力に感心を致しまして、「この人こそ、第一次大戦後のベルサイユ体制によって打ちひしがれたドイツ人に、新しい誇りと自信と希望を与えてくれる素晴らしい政治家である」と信じて歓迎したのであります。

しかしボンヘッファーは、ヒトラーの正体をかなり最初の段階から見抜いていたと言われています。そして1933年1月30日に、ついにヒトラーは政権を獲得しドイツの総理大臣になりました。嵐が現実にすべての人を襲い始めたのであります。

この時を境に、ボンヘッファーの生活は変わるのです。神学者として大学で研究したり講義をしたりというような静かな暮らしを続けるわけにはいかない。キリストに従う者として今どのような歩みをするべきか、真剣に考えて生きなければならなくなったのです。