「福音を分かち合い、まことの絆に生きる―テゼ共同体に学ぶ―」植松功氏・江藤直純氏・吉川直美氏(5/5)

渇いた魂の声なき声にを傾けていく

—日本の教会にとってのテゼ共同体の意味とは?

植松 いろいろあると思いますが、ブラザーは青年たちをすごく信頼しているんですね。青年たちの中に働く聖霊への信頼と言ったらいいでしょうか。本当によく青年たちの話に耳を傾けるんです。我々日本の教会が、青年たちに何かを伝えるという以前に、青年たちの抱えている現実に謙虚にひたすら耳を傾けるだけでも、多くの青年にとって福音だと思います。

江藤 14年連続で自殺者が3万人を超えるような日本社会で、その魂の渇きに、泉の水が注がれるような働きとして、テゼ共同体の祈り、黙想、讃美があると思うんです。そして、沈黙の中で聴くというのは、神様の声に聴くと同時に、私たちの周りにいる人たちの心の渇きにも耳を傾けていくことだと思うんです。声なき声、渇いた魂のかすれた声に聴いていく。そういうスピリチュアリティー、霊性が、今の日本の教会でもっと育つ必要があるし、社会に奉仕することにも役立つと思います。

sp130329-3植松 ブラザー・ロジェが書かれた、テゼのブラザーたちのルールにこんな文章があります。「イエス・キリストはわずかな人々の為にではなく、すべての人々の為に来られました。御復活を通して例外なくすべての人間を一つにされたのです。このような普遍性の心を、神はあなたの中に置かれたのです。始まりも終わりもない内なる命が、あなたの内に成長することに任せますか。その時あなたは福音の喜びの入り口に立つのです。そしてそこにこそ、人間の連帯は根を下ろすのです。身近な人々であろうと、遠くの人々であろうと、それらすべての人々にとって地球を住みやすい所にすること、それはあなたが自分の人生によって書き上げる、最も美しい福音のページの一つとなるのです。」

江藤 多くのプロテスタントの教会にとって、礼拝や祈りの場の「美しさ」みたいなものは欠けているんじゃないかと思うんです。テゼの音楽、祈りの言葉は、一つ一つが素直に美しいと思えるんです。美しいというのは、人間の五感にとって大切な事で、知性だけで信仰生活をするわけではないですからね。

植松 ブラザー・ロジェがドストエフスキーの言葉を引用して「美は世を救う」と。その事は、福音を伝える時にとても大切な側面ですよね。それはシンプリシティーと不可分なことで、シンプルになればなるほど、一番単純になればなるほど扉が広くなるのではないでしょうか。
(文責・月刊誌編集部)