「あなたは神の国から遠くない」榎本保郎氏

神ときる決断

この前台湾に行った時に、台湾の長老教会が(当時の)国民党政府に対して一つの批判をして、各教会の礼拝で声明文を読むということになったんです。しかし、読む教会と読まない教会があって、読んだ教会の牧師が引っ張られたり、教会に警官や憲兵がやってきたり、非常に大きな問題が起きたわけです。私はそのことは一体どないなりましたかと聞いたのですが、一人の牧師が「先生、それはお聞きにならん方がいいですよ。日本に帰れなくなりますよ」と言うのです。私はこういったことの中に、日本でキリスト教信仰を持っている者のひ弱さというものを感じたんですね。キリスト者として、今どう生きるか。それは議論ではなくて、キリストがその人にとって誰かということが問題だと思いますね。

また、私の友人がある時、網走の刑務所へ行って、そこの囚人とちょっと文学をひねったような話をしたら、その中の死刑の宣告を受けた人が、「先生、私らは神様を疑う余裕がないのです」と言われたそうです。そこに立っている者にとっては、イエスの十字架にすがるより他しょうがないという意味だと思います。

神は死んだ者の神ではない。議論の対象としての神ではない。
抽象された世界の神ではなく、具体的な世界の神、そこで生きていらっしゃる神です。