「あなたは神の国から遠くない」榎本保郎氏

椎名麟三という人が死んだ2、3ヶ月後に『信徒の友』で特集になったことがありました。
彼の復活体験について書いてありましたが、あれだけの作品を書いた文学者であるのに、復活の体験は非常に単純というか簡単なものでありましたね。その点では読んでいて物足らないくらいでした。彼にとってイエス様の復活というものは神秘的な経験として体験されたとだけ書いてあり、そこでは議論なんかは全然ないわけです。それが彼の人生、彼の文学というものを決定していくわけです。

「神の力をあなたがたは知らない」とイエス様はここで言われています。
本当に神様に圧倒された経験—それは、カルバリの山で十字架について下さったイエス様は私のためだったということを議論で納得するのではなくて、あの十字架は私の罪の贖いとなったんだという経験が「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」というものだと思います。信仰とは、そういう原体験がなければ、ただ議論を楽しんでいるだけになるかもしれません。今日の教会が、どんなに現代の問題に関わっているだのなんじゃの言っていても、それでは単なる暇人の仕事になってしまうんです。