「三つの誘惑」英隆一朗氏

イエス自身にとって
どういう誘だったのでしょうか?

イエスはパンを増やす奇跡をしたわけですから、パンを作ることはできたんです。でも人々にパンだけ与えていていいのかどうか。つまり、人々に物質的満足だけ与えていて本当に神の愛が伝わるのかどうかということが、彼の中にあったと思うんですね。

また、イエスは湖の上を歩いたんです。だから人々の前でスーパーマンのような力を発揮することはいくらでもできたんです。でも、それは本当の意味で神の愛を伝えるメッセージにならないと思ったんですね。

そもそも、イエス様が本当に神の国を造るんだったら、有能な弁護士とか政治家とか軍人を弟子にして、自分が王になって神の国を造るのが一番インスタントな方法だったと思います。でも、それでは神の国が伝わらない。だから彼は、十二人の、まったく無能力の人を選んで、政治的にも経済的にも権力を握らないで、神の国を宣べ伝える道をわざわざ選んだということなんですね。

この話は、イエスが本当に神の国を伝えていくにはどういうやり方がいいのかということを考え抜いたプロセスとも言えます。それでイエスは、人を驚かせるようなこととか、能率、効率ではない形で、神の愛を宣べ伝えた、その戦いであるというふうにも言えると思います。

(文責・月刊誌編集部)