「神に向かって歌え、私の心よ」平野克己氏

私が、二十代のころ、七十を超えた方が、突然教会にやってこられました。ある会社で、役員までつとめられた方でした。
ある時、その方が定期券を買われた。ずっと並んで、ようやく自分の番が来たと思ったら、ふっと若者が側に…駅員はいらだって「どっちが先ですか??」と。
その方は答えた。「私です。私にきまってるじゃないか!」
その後、彼はプラットホームに立った。高い場所にあるプラットホーム。そこに風が吹いてきた。そのとき、自分の中からなにかが崩れたのだそうです。「いったい幾度自分は、『私!』と叫びながら、これまで歩んできたことだろうか。その自分が、まもなく人生を終えなければならない」と。
そして、彼は教会の門をたたいて、洗礼を受けた。