「『生命の尊厳を守るために』~『戦争』について」より
あなたはどう生きるか―現代キリスト教倫理
村上伸氏(日本基督教団隠退教師)
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私は敢えて申したい。
もしも人類がこれまで繰り返してきたバカバカしい戦争をまたもや繰り返すのなら、歴史とは一体何でしょうか?私たちには、過去の過ちから何かを学んで将来同じ過ちを繰り返さないように伝えていく責任があると思うのです。
私自身、戦争のさなかに10代の前半を過ごした者です。兄は戦死し、そして空襲で焼かれた東京でウロウロしたという経験があります。家族は散り散りになって一年間は消息が分かりませんでした。戦争は、人間性というものを根こそぎ破壊します。戦争での一般庶民の嘆きや悲しみ、本当に苦しんでいる方の声、それを聞くといういうことが何にもまして大事ではないでしょうか。イエス・キリストという方はそういう方でした。本当に底辺で苦しんでいる人たちの嘆きの声を聞き、その方の近くに行かれた方です。そのイエスにならって生きる。これが「キリスト教倫理」の中心だと思うのです。
その点からすると納得できないことが多すぎます。今だに「正しい戦争ならしても良い」という考えがあります。しかし、この「正しさ」とは何か?どこかで勝手に自分を正当化するということがある。「正義のための戦争」などというのは、イエス・キリストに従って生きていこうとしたら、簡単に言ってはならないと思います。局地的な戦争が、核戦争につながります。正義もヘチマもない、地球そのものが消えてしまう、そういう時代になってきている。「正しい戦争」などというのは実際上ないのです。私は正に「キリスト教倫理」の立場から言って、戦争とは悪であると、そのことをハッキリとわきまえておかなければいけないと思います。