「秘められた悲しみ」塩谷達也氏(2/2)

これは、ただの言葉遊びではないのです。元の歌詞はこちらの方だったという研究もあります。そうすると「何と素晴らしい朝」ではなく、「おお、主よ、何と悲しいことか」「何という呻きか」ということになります。

奴隷主の白人たちは、黒人たちが「何という素晴らしい朝か」と歌って働き始めていると思っているかもしれないけれども、彼らは、現実的な制約、またムチ打ちさえされる辛い状況の中で、工夫をしながらクリエイティブに歌で表現をしていったのです。
黒人霊歌には、この様に、彼らの思いが深く重ね合わされているのです。

黒人奴隷たちは朝になると、間違いなく「what a mourning(主よ、何と悲しいことか)」と歌っていたに違いありません。もちろん、終わりの日の希望があるから歌うのです。けれども、実際の生活の中で、プランテーションで夜明け前に奴隷たちを起こす鐘の音が鳴ると、彼らはダッシュで綿花畑の畝の中に入っていかなければならない。日の出前に出ていき、日の出と共に働き始める。

1409_sofg1409_02恐らく、星がひとつふたつと消えて行き、寒い頃には明けの明星が一番最後に見えなくなる―When the stars begin to fall、まるで終わりの日のように、夜明け前の星が消えて行く時に、彼らは働きに行かねばならなかった。その中で、この一見美しい歌「what a mourning(主よ、何と悲しいことか)」が歌われていたのです。
(文責・月刊誌編集部)